令和2年5月29日、伊那市全員協議会が開催され、地域の重要な施策が議論された。
議題の中で特に注目されたのは「支え合い買物サービス」である。このサービスは、地域住民が新型コロナウイルス影響下でも買物を続けられるよう、タブレット端末やZoomを用いてリアルタイムで注文を受け付ける仕組みを導入するものである。企画部長の飯島智氏は、「使い慣れたケーブルテレビのリモコン操作で注文ができるようにすることが大きなメリットだ」と述べ、このサービスにより、高齢者を含む地域住民の利便性向上を図る考えを示した。
サービスの利用者は月額千円のサブスクリプション料を支払うことになり、共同購入により生じるコストの抑制が期待されている。商品は、午前中に注文すると、当日の夕方には届けられる仕組みがあり、迅速な配送も大きな特徴となっている。重要なのは、地域コミュニティーの維持と高齢者の生活の質の向上を目的とするこの取り組みが、少子高齢化が進む中での新しい生活様式に則したものである点である。
次に、伊那市観光株式会社が指定管理する宿泊、温泉施設の今後の営業計画も議題に上がった。商工観光部長の竹村和弘氏は、新型コロナウイルスの影響で極めて厳しい経営状況が続いていることを報告し、日帰り入浴施設の営業再開を歓迎しつつ、宿泊施設の運営再開には慎重な姿勢を見せた。コロナ感染拡大の影響を受けつつある施設の現状を踏まえ、職員やアルバイトの雇用を守りながら経営改革を進める方針を表明した。
また、都市計画マスタープランおよび立地適正化計画の策定についても報告が行われた。都市整備課長の伊藤一真氏は、伊那市が直面する人口減少の危機に対し、住まいの集約化を進める必要があると強調し、「中心市街地に活力を与え、周辺部とのバランスも常に考慮していく」との見解を示した。特に、中心部への人口集中を図りつつも、周辺地域の価値も認識したコンパクトな地域づくりを目指す姿勢が示され、市民の意見を丁寧に反映させたいとの意向も語られた。
最後に、伊那市水道・下水道事業経営健全化計画について守屋水道部長が報告した。水道事業は、安全かつ安心な水供給を目指し、具体的な施策の実施が求められる中、収支計画の見通しについても言及。料金改定が必要になる見込みであることを明らかにし、経営効率の向上が急務であるとした。
この日の協議会では、今後の地域の課題解決に向けた議論がさまざまな角度から行われ、地域振興や市民サービスの向上に寄与する可能性が感じられた。