令和5年3月14日に開催された伊那市議会全員協議会では、社会福祉協議会の不祥事に関する報告が行われた。
白鳥孝市長は、「今回の不祥事について皆様に報告する」と述べ、伊那市社会福祉協議会に関与する職員が利用者の預金を不正に引き出していたことが明らかにされた。
顧問弁護士の長谷川洋二氏からの説明によると、事件は昨年10月から今年の2月にかけて発生した。職員が利用者の預金通帳を無断で払い戻し、918万4,906円の使途不明金が存在するとされている。具体的には、社協の職員が家庭裁判所から成年後見人を指名され、預金通帳を管理していたが、復帰後にお金を取り扱う際、適切な管理が行われていないことが問題視されている。
長谷川氏はまた、「事件発覚後、被害の弁償は行われたが、事件の背後にある組織的な問題についても調査が必要」と強調した。その後、篠田貞行社会福祉協議会会長は、事件によって利用者と裁判所の信頼を裏切ったことを謝罪し、「今後は再発防止策を強化し、体制を見直す」と述べた。
再発防止策について、篠田会長は、預金通帳の管理体制を見直し、外部からの監査を導入することを検討していると述べた。また、職員は倫理に関する研修を受ける必要があると認識し、性悪説に基づくリスク管理の重要性を指摘した。今後の方針として、預金の管理担当者とは別の職員にチェックを行わせる体制への移行が提案された。
本件に関しては、伊那市内の8市町村に対しても説明が必要であるとし、透明性を高めるための対応も求められている。今後、後見業務については、適切な管理が行われなければ、裁判所が業務を停止する可能性があることも懸念される。
有識者からは、今後の信頼回復のためには誠実な対応が不可欠との意見があり、伊那市社協に対して厳密な監査と透明性の確保が求められている。経済的な被害額が特定の利用者に限定されていたことは不幸中の幸いだが、このような事態が二度と起こらないよう制度の見直しが求められている。