令和元年7月24日に開催された奈良市議会の臨時会では、議案第82号として令和元年度奈良市一般会計補正予算が提案され、特に市庁舎の耐震補強を中心的な議題として審議が行われた。
本議案では、耐震補強に要する総額34億498万円の内、本年度の事業費として12億8300万円の使用が予定されている。自民党結の会に所属する三浦教次議員は、本件に関し「耐震補強の使途について詳細な説明を求める」と述べた。
これに対し、仲川元庸市長は「耐震工事費23億5400万円と長寿命化工事費8億4100万円から成る」と明言した。この耐震補強案は、強度基準であるIs値0.75を目指したものであり、より高い0.9の実現を求める声もあったが、依然として議論の余地があるとの認識も示された。
また、三浦議員は、国土交通省が提唱した防災拠点等のガイドラインを引き合いに出し、「耐震化と長寿命化は、市民の命を守るために中長期的視点からも重要である」と訴えた。市長は、現市庁舎が歴史的な経緯から耐震性能に課題を抱えることを踏まえ、「新たな投資が必要」と強調しつつ、災害時に機能を果たせる耐震性を確保することが最大の責任であると述べた。
さらに、今回の補正予算案には、耐震と長寿命化の計画を実施する一方で、各種施設の維持管理費を削減する必要性があることも示された。これに関して仲川市長は、「緊急避難所としての役割を果たし得るためには、迅速な耐震対策が求められる」と説明した。
市長がこのような決断をする背景には、教育施設などその他の公的機関も古い建物が多いことがある。松石聖一議員は、耐震化が進まない状況の中で地震が起こった場合の影響について、「市民の安全が保たれない危険性がある」と述べ、早期の決定が求められる旨を強調した。
また、議会において市長が市民の意見を十分に聞かれていないとの指摘もあがり、今後の説明会等で市民が納得できる説明の上で進めることが重要であるという意見も出た。特に、耐震化の計画が市民生活に直接影響を与えるだけに、参加を求める市民の声に耳を傾けることが不可欠とされ、今後の議論の行方に注目が集まっている。