令和3年12月16日、新宮市議会においてさまざまな議題が審議され、複数の条例改正案や予算補正が可決された。中でも、押印制度の見直しに関する議案第61号には、議員からの多くの意見が寄せられた。今回の見直しの背景には、国が提唱する行政のシンプル化があった。議案を提案した三栗章史議員は、「市民の申請時の利便性を高めることが目的である」と述べ、押印を廃止する方針を説明した。
しかし、この議案には反対意見もあった。大西強議員は、押印を廃止することによる日本の伝統的な価値観の侵食を懸念し、自身の思い出や文化的背景を交えながら議論を展開した。「印鑑は私の魂である」と強調し、押印廃止によって日本人としての美徳が失われることを危惧した。彼はまた、「行政が利便性を重視するあまり、簡素化することには問題がある」と指摘し、反対の立場を明確にした。
議案第70号の水道事業会計補正予算については、特に異論は出ず、順調に可決された。また、議案第62号、新宮市国民健康保険条例改正の際にも、議員たちは事務的な説明を求めたが、特段の問題は生じなかった。
さらに、副市長の選任に関する議案第85号では、市長が向井雅男副市長の再任を推薦した。田岡市長は彼の知識と経験を評価し、「これからも新宮市政のために貢献してほしい」との意向を伝えた。これに対して、大西議員は再任に反対し、「向井副市長が市長に適切な助言を行わなかったことを問題視する」と述べたことが注目された。
また、教育長の任命を球す議案第86号も可決され、速水盛康教育長は改めて市の教育行政に全力を注ぐ意向を示した。議会の審議は、さらなる市民サービス向上に向けた内容が多く、急務である子育て世帯の支援策に関する予算案や新宮市政治倫理条例なども承認され、前向きな進展が見られた。議会閉会の際、田岡市長は市民の信頼に応えるような政治を進める決意を新たにし、今後の取り組みに期待が寄せられる。